
Ddです。
X(Twitter)もやっています。【お問い合わせ】
新NISAからの市場参加者にとっては不安を感じやすい状況
2025年に入って、これまで異常に好調だった株価が低迷している。トランプ関税の影響による米国や世界の経済後退も否定できない状況となっており、一部では、近いうちに大暴落が来ると予想する声も上がっている。
新NISAが始まってちょうど1年。制度開始を機に全世界株式や全米株式などのインデックス投資を始めた人々にとっては過去最大のショックとなっている。証券口座のアプリを開けば昨日より自分の資産価値が減少している現実が表示され、大きな不安を感じている人も多いはず。
こういう時こそ、過去・現在・未来を冷静に俯瞰し、どういったマインドで自分の資産形成に向き合うのか、改めて整理しておく必要がある。短期的な下落相場で行動に出れば、資産形成に大きく失敗する結果に繋りかねない。
積立を始める前に情報収集などして理解していたはずでも、いざ自分の資産が目減りし始めると、冷静さを保てず、狼狽売りなど、長期投資で不合理とされる行動をとってしまう人は後を経たない。
この記事では、インデックス投資をする上での、相場低迷時の行動指針についてまとめたので、ぜひ読んでいってほしい。
行動指針(結論):ホールドしつつリスク許容度を見直せ
結論、新NISAからの参加者だけに限らず、長期投資による資産形成を目指すすべての人に当てはまる、相場低迷時の行動指針は次の2つ。
- 積立を継続する
これが何より重要。株価が下がっている時期こそ、安値で購入できるチャンスと捉えるべき。 - リスク許容度を再確認する
下落相場で不安を感じるのは当然だが、自分のリスク許容度を見直し、無理のない範囲で投資を続けることが大事。
理解しておくべき事実
暴落はいつか来て当たり前
株式市場において暴落は決して珍しいことではない。むしろ、市場のサイクルの一部として定期的に発生するものだ。
過去を振り返ると、リーマンショックやコロナショックのような大規模な暴落はもちろん、小規模な調整も頻繁に起こっている。
暴落は避けるものではなく、受け入れるものだという認識が重要である。
"想定運用利回り"を正しく理解しよう
積立を開始する前、自分で調べたか、あるいは人に説明されて、次のような想定運用利回りの図を用いて資産形成のシミュレーションをしただろう。

このようなシミュレーションでは、想定運用利回りという、一定の期待リターンを前提にした計算が行われるため、グラフは右肩上がりのなめらかな曲線を描く。
しかし、現実の市場はこのように単調に成長するわけではない。
実際はこのS&P500これまでの推移のように、株価は日々変動し、年によっては大きな下落を経験することもある。

このように上下を繰り返しながら長期間保有した場合、多くのインデックス投資のリターンは4〜7%に収まっている。これが、積立投資のシミュレーションをする際の想定利回りを5%や7%で行うことに繋がっている。
その結果先ほどのシミュレーショングラフのようになるのであって、決して誤った資料を見せられたわけではない。
5,5,5,5,5,5,5,5,5...の平均も5だが、-16,19,6,2,1,16,7,-11,17,9の平均も5であり、先ほどのシミュレーションは、雑だが誤っているわけではないということ。
しかし、これをしっかり理解せず、シミュレーション通りに資産が増えると信じていて、株価が下落した際に大きな不安を感じ、「騙された」などと言い出いだしてしまう人もいるのが現実。「インデックス投資の積立を続ければ毎年順調に資産が増える」などというわけではないことを、暴落を経験する前から必ず理解しておいてほしい。
20年や30年という長期間投資することにより、その平均が概ね4〜7%に収束していくという、これまでの歴史を鑑みて作られたシミュレーションなのだ。
長期投資において暴落を避けようとするのは愚策

暴落が怖くて「いったん売って、相場が落ち着いたら買い戻そう」と考える人は多い。
でも、実際のデータを見ると、そういうマーケットのタイミングを計る行為(マーケットタイミング)は、長期的なリターンを大きく減らす原因になってる。リスクではなく、損失。
市場タイミングを見極めるのは基本的に無理。プロの投資家でも困難。
株式市場では、一年のうち数日だけ大きな上昇が発生することがあり、これが「稲妻が輝く瞬間」と呼ばれる。この数日を逃すと、長期的なリターンが大きく低下することが過去のデータで証明されている。
S&P500への投資家が「稲妻が輝く瞬間」を逃した場合の分析
例えば、S&P500の歴史的データによると、最もリターンが高い数十日の上昇日を逃した場合、長期的な運用成績が大幅に悪化する。
これについて、東京都の資料で、非常にわかりやすいものがあった。
この資料によると、S&P500の平均年率リターンは11.11%であったのに対し、実際にS&P500に連動するファンドの保有者が得たリターンは、平均たったの3.69%だったとのこと。

これは、仮に100万円をS&P500に投資し続けていたら、30年後には約2,589万円になっていたということ。
でも実際のファンド保有者の平均リターンで計算すると、資産はたったの296万円。
市場に居続けたか、それとも恐怖で売ってしまい、戻るタイミングを逃したか。その違いが生んだ、絶望的な差。
この差が生まれた一番の理由は、多くの投資家が暴落を避けようとして市場から離れた結果、株価が回復するタイミングを逃したこと。つまり、機会損失。
マーケットの動きは誰にも読めない。「稲妻が輝く瞬間」と呼ばれる株価急騰のタイミングを逃すと、リターンはガクッと落ちる。
だからこそ、暴落が怖いからといって売買を繰り返すんじゃなくて、一貫して市場に居続けること。これこそ、長期的に資産を増やす最も合理的な戦略。
長期的には世界経済は成長する

株式市場は短期的には上下動を繰り返し、時には暴落も発生する。しかし、過去の市場の歴史を振り返ると、長期的には常に成長を続けてきた。
例えば、世界の株式市場を代表するMSCI ACWI(全世界株式指数)は長期的に右肩上がりの成長を遂げている。
もちろん、未来のことを断定することは誰にもできないが、今後も長期的には、これまでと同じように成長を続けていく可能性が限りなく高い。
この背景には、経済の本質が「成長を前提としている」という根本的な仕組みがある。
企業は利益を追求し続ける存在であり、技術革新や生産性の向上によって、社会全体の価値を生み出しながら発展していく。これは一部の企業に限った話ではなく、産業全体、そして世界全体で繰り返されてきた現象。
短期的な景気後退や暴落があっても、長期的な成長トレンドは変わらない。世界経済が成長する限り、株式市場もまた上昇していく可能性が高い。
あまりに酷く経済が落ち込めば、政府が介入する
各国の政府や中央銀行は、景気が悪化した際に経済を立て直すための政策を講じる。
例えば、金利を引き下げて企業の借入コストを下げることで設備投資を促したり、個人への補助金や減税措置を実施して消費を活性化させたりする。
こうした施策は、短期的な景気後退を乗り越え、経済を再び成長軌道に乗せる役割を果たす。
その結果、たとえ一時的に株価が暴落しても、最終的には回復し、新たな成長へと向かうのが市場の一般的な流れである。
積立においてはむしろ暴落は有利

投資初心者は、相場の暴落はただの資産喪失リスクと捉えがち。
しかし、実際には 暴落が定期的に発生することは長期的な投資リターンを向上させる要因になり得る。積立投資の最大のメリットはドルコスト平均法にある。
ドルコスト平均法とは、一定の金額で定期的に金融商品を購入し続ける投資手法だ。
つまり、あなたが新NISAで口座を解説し、毎月同じ額を投資に回しているなら、あなたはドルコスト平均法の恩恵を受けることができているということ。
価格が高い時には少ない口数を、価格が低い時には多くの口数を購入することになるため、購入単価が平準化され、価格変動リスクを軽減できるという特徴がある。
ドルコスト平均法についてもう少し詳しく説明しているのはこちら。
定期的に暴落が発生すると、短期的には資産評価額が一時的に減少するものの、その暴落時に安く多くの口数を購入できるため、長期的なリターンを向上させる可能性がある。
これにより、市場が回復したときのリターンがより大きくなる。
仮に、価格が上昇し続ける市場では、投資家は常に高値で買い続けることになり、購入単価が高止まりしてしまう。
一方で、市場が暴落と回復を繰り返す場合、暴落時に多くの資産を仕入れられるため、回復した際により大きな利益を得ることができる。
まとめ

もう一度結論をおさらいする。行動指針は次の2つ。
- 積立を継続する
- リスク許容度を再確認する
行動指針1. 積立を継続する

これが何より重要。株価が下がっている時期こそ、安値で購入できるチャンスと捉えるべき。
こう言い切れる背景には、次のような事実があるから。
- 暴落はいつかきて当たり前
"想定利回り"とは何なのか理解しておけ - 長期投資において暴落を避けようとするのは愚策
「稲妻が輝く瞬間」を逃すリスクが高まるだけ
毎月定額での積立投資は、ドルコスト平均法の恩恵を受けることができる。株価が高い時には少なく、低い時には多くの口数を購入できるため、長期的には安定した資産形成が可能となる。
市場が回復したときに大きなリターンを得るためには、安値での購入を続けることが鍵となる。過去のデータが示すように、長期的に市場は成長するため、目先の下落に惑わされず投資を続けることが大事。
行動指針2. リスク許容度を再確認する

下落相場で不安を感じるのは当然だが、自分のリスク許容度を見直し、無理のない範囲で投資を続けることが大事。
リスク許容度とは、投資において許容できる損失の範囲を指す。
そして、「リスク許容度を超える」とは、自分が許容できる損失を超える状況に陥り、適切な投資行動が取れなくなることを指す。これには、以下のような具体的なケースが考えられる。
- 市場が大きく下落した際にパニックになり、安値で売却してしまう
- 生活費に手をつけてしまうような投資をしてしまう
- 投資のストレスで日常生活に支障をきたす
一時的な市場の変動に振り回されず、長期的な視点で運用を続けることが大切なインデックス投資において、このような状態は非常に好ましくない。
ここまで散々、インデックス投資では下落相場でも続けることが大事という説明をしてきたが、リスク許容度を超えていると感じた場合は、売却を含めて資産配分を適正化しよう。生活を犠牲にしてまで続けるべき投資はない。
市場の暴落は避けられない現象であるため、精神的にも安心できる形で運用を続けるように体勢を整えよう。
振り回されるな
2025年の株価低迷は不安を招くが、長期投資の観点からは絶好の機会でもあるわけ。
積立NISAの本来の目的は、短期的な価格変動に振り回されることなく、将来の資産形成を目指すことである。市場の下落に惑わされず、淡々と積立を継続することが、最も賢明な投資行動。