OpenIAIが、ChatGPTへのGPT-4.1のリリースで世の中をまた少し便利にしてくれた。
ChatGPTは現在、実際どこまで“使える”のか。そして無料ユーザーはどこまで使えるのか?定量的な事実を確認して、俺なりの見立てを示す。

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進化の具合に関する結論
GPT-4.1は2025年5月15日、ChatGPT(Web・アプリ)上で正式解禁された。
「進化のポイントはどこ?」と問われれば、こんなかんじ。
- 無料ユーザーはmini版のみ使える
- コーディングが大幅パワーアップ
- 正しく指示を聞けるようになった
- 長文に強くなった
GPT4.1は無料ユーザーも使える?

GPT4.1にはモデルバリエーションがある(mini, nano)
GPT-4.1には実はいくつかの「モデルバリエーション」がある。フル機能版の他に、mini(ミニ)やnano(ナノ)といった“軽量版モデル”も用意されている。
ここで言う「mini」や「nano」とは、簡単に言えば「計算が軽くて、速く・安く動くバージョンのAI」ということ。
たとえばスマホアプリに“軽量版”や“省電力モード”があるように、AIにも「少し賢さや機能を抑えめにして、そのぶん安価でサクサク使える」モデルがある。
miniは「フル版のGPT-4.1の頭脳をなるべく維持しつつ、コストとスピードを重視した中間モデル」。nanoは「さらにコンパクトに最適化した超軽量モデル」とイメージすればOK。
nanoはAPI経由など、特にスピード重視やコスト重視の用途で裏側で使われることが多い。たとえば大量のユーザーが同時にアクセスする状況や、組み込みデバイス向けなどだ。
有料ユーザーと無料ユーザーでの違い
有料ユーザーはGPT4.1の全モデルを気兼ねなく使い倒せる
有料プラン(Plus、Pro、Teamなど)のユーザーは、モデル選択からGPT-4.1を自由に選択できる。リクエストの上限は従来のGPT-4と同じ水準に設定されていて、たとえばPlusの場合は3時間あたり約80件のメッセージやリクエストが送れる。
これは実質的に「ふつうに使うぶんには上限を意識せずGPT-4.1のフル機能を使える」という状態で、長文タスクや連続したやりとりも問題ない。ストレスフリーにGPT-4.1を使いたいなら有料ユーザー一択。
無料ユーザーはGPT4.1 miniのみ
無料ユーザー向けにはGPT-4oの使用制限に達した際にフォールバックモデルとして機能する。
まず、ChatGPTの無料ユーザーは、GPT-4oを使えるようになっているが、利用回数に上限がある。この回数制限に達すると、以降のやり取りは自動的にGPT-4.1 miniという軽量版モデルに切り替わる仕組みだ。
GPT-4.1 miniはGPT-4.1本体のフル機能版ではなく、あくまで「無料ユーザー向けの高性能な簡易版」だと思っておいた方がいい。
つまり、無料で使えるのはGPT-4o(回数制限あり)と、その回数を超えた後のGPT-4.1 miniだけで、最上位のGPT-4.1フルモデルにはアクセスできない。
無料ユーザーも最新技術の恩恵を受けられるようにはなっているが、プロフェッショナル用途や最大限の精度・機能を求める場合は有料プランへの切り替えが必須というのが現状。
プラン種類 | 使えるモデル |
---|---|
無料プラン | GPT-4.1 mini(GPT-4oの回数制限後の代替として) |
有料プラン(Plus, Pro, Teamなど) | GPT-4.1(フル機能) GPT-4.1 mini ※いつでも切り替え可能 |
【計測データで見る】何がどれぐらい進化したのか
コーディング性能がアップした

AIが「コードを書く」時代は既に始まっているが、現実は甘くない。GPT-4.0以前は、「動きそうで動かないコード」をよく吐き出してきた。
GPT-4.1では、その状況がまた一歩改善された。
Helicone社の2025年5月16日公開ブログ「GPT-4.1 Full Developer Guide」によると、その進化が定量的データで示されている。
コード修正の成功率が21.4%UP!

SWE-bench Verifiedとは、主にAIのコーディング能力(特に「既存コードのバグ修正」能力)を客観的に評価するためのベンチマーク(基準テスト)のこと。
要するに、「本当に現場で役立つAIコーディング能力」を、実際のバグ修正タスクでどこまで達成できているかを点数化したガチ指標だ。
AIモデルが「SWE-bench Verified」で高得点なら、机上の空論じゃない実用レベルのコーディングができる、と判断される。
Helicone社の2025年5月16日公開ブログ「GPT-4.1 Full Developer Guide」によると、SWE-bench(GitHubの実際の修正課題をAIが解決できるか)でGPT-4oは33.2%の成功率だったのに対し、GPT-4.1は54.6%まで上昇したとのこと。
SWE-bench Verified: One test measuring ability to solve real GitHub issues in actual codebases, GPT-4.1 scored 54.6%, far outperforming GPT-4o (33.2%) and GPT-4.5 (28%).
SWE-bench Verified:実際のコードベースで本物のGitHubのissueを解決する能力を測るテストで、GPT-4.1は54.6%のスコアを記録し、GPT-4o(33.2%)やGPT-4.5(28%)を大きく上回った。
Helicone社「GPT-4.1 Full Developer Guide」
つまり、「AIにコードレビューや修正を任せても、半分以上の確率でちゃんと動く修正案が出てくる」時代に近づいたと言える。
AIは、現場の「めんどくさい単純作業」を肩代わりする範囲を着実に広げつつある。SWE-bench Verifiedのスコア上昇は、その具体的な証拠だ。
「言われたところだけを直せる」率が34.6%UP!

「言われたところだけ直せてるか」、「余計なところをいじっていないか」を数値で示すものを、Code Diff Accuracy(コード差分の精度精度)という。コード差分の精度が高いほど、AIによる部分修正が現場で実用的になる。
同じくHelicone社のブログ「GPT-4.1 Full Developer Guide」によれば、このコード差分の精度精度が、GPT-4oでは18.3%、GPT-4.1では52.9%となっており、34.6%の大幅上昇となった。
Code Diff Accuracy: When asked to modify only specific parts of code instead of rewriting entire files, GPT-4.1 achieved 52.9% accuracy compared to GPT-4o's 18.3%.
コード差分の精度: ファイル全体を再生成するのではなく、コードの特定部分のみを修正するよう求めた場合、GPT-4.1は52.9%の精度を達成し、GPT-4oの18.3%と比較して大幅に向上した。
Helicone社「GPT-4.1 Full Developer Guide」
GPT-4.1は「人間のエンジニアと同じ感覚でピンポイント修正が期待できるようになった」というわけ。
「余計な編集をする」率が2%まで減少!

コード修正タスクで「余計な編集」をどれだけ減らせるかも重要。GPT-4oは不要編集率9%。GPT-4.1はわずか2%まで激減。
「勝手なことすんなよ」と突っ込む回数が大幅に減った。
Unnecessary Edits: Another win for GPT-4.1 — it only made unnecessary edits 2% of the time, down from 9% with GPT-4o.
不要な編集: もう一つのGPT-4.1の進化ポイントとして、不要な編集を行った割合が2%にまで下がり、GPT-4oの9%から大きく改善された。
Helicone社「GPT-4.1 Full Developer Guide」
【11.5%UP】より正確に指示を守るようになった

「AIに指示をしたら、予想外のことをやる」——この現象、体験した人も多いだろう。AIは、時々とんでもない思い違いをしてくれる。しかし、ここも進化した。
MultiChallengeベンチマーク
FelloAI社(2025年4月27日)のレポート「GPT-4.1: A GPT-4o successor that’s crushing benchmarks」によると、複雑なタスク指示の正答率はGPT-4oが27.8%、GPT-4.1は38.3%。
An internal evaluation using Scale's MultiChallenge benchmark shows GPT‑4.1 scoring 38.3% compared to 27.8% for GPT‑4o.
Scale社のMultiChallengeベンチマークを用いた内部評価では、GPT-4.1が38.3%のスコアを記録し、GPT-4oの27.8%を上回った。
FelloAI社「GPT-4.1: A GPT-4o successor that’s crushing benchmarks」
まだまだ“的外れ”はゼロじゃないが、10.5ポイントの改善はChatGPTの回答に対する「ガッカリ率」がだいぶ下がったことを意味する。
複雑な手順指示の遵守率

Helicone社の2025年5月16日公開ブログ「GPT-4.1 Full Developer Guide」によれば、より「多段階の複雑な指示」への正答率もGPT-4oで29%→GPT-4.1で49%と20ポイントアップ。
Complex multi-step instructions: GPT-4.1 followed complex, multi-step instructions correctly 49% of the time, up from 29% for GPT-4o.
複雑な多段階の指示:GPT-4.1は複雑で多段階にわたる指示を49%の確率で正しく実行でき、GPT-4oの29%から大きく向上した。
Helicone社ブログ「GPT-4.1 Full Developer Guide」
だが、逆にあえて厳しいことを言えば、「指示の半分はまだ微妙にズレる」という現実も変わらない。まあ、期待しすぎは良くはない。
長文に強くなった【8倍】
AIは長い文章を読んでいるようで、一定量を読むと忘れるもの。しかし、その弱点が大幅に改善された。
最大コンテキストウィンドウ

最大コンテキストウィンドウとは、「AIが一度に覚えておける(理解しながら処理できる)テキストの最大量」のこと。
OpenAI公式ブログ「Introducing GPT-4.1 in the API」(2025年4月14日公開)によれば、GPT-4oでは「128,000トークン(日本語でざっくり10万字強)」が限界だったが、GPT-4.1では「100万トークン」まで一度に保持できるようになった。単純計算で約8倍。
GPT‑4.1, GPT‑4.1 mini, and GPT‑4.1 nano can process up to 1 million tokens of context—up from 128,000 for previous GPT‑4o models.
GPT-4.1、GPT-4.1 mini、GPT-4.1 nanoは、最大100万トークンのコンテキストを処理できます。これは、以前のGPT-4oモデルの128,000トークンからの大幅な増加です。
OpenAI「Introducing GPT-4.1 in the API」
これはざっくり文庫本10冊分以上の分量を一気にAIの頭の中に置いておける計算になる。これにより、次のような進化を起こしている。
- 超長文の資料や複数文書を一気に貼り付けて要約や分析を依頼できる
- 会話や議事録がいくら長く続いても、文脈を失わずにやりとりできる
- 以前は「古い話は忘れました」となっていた内容も覚えていてくれる
実用的には、次のような影響がある。
- 長大なレポートや研究論文、本の丸ごと要約が可能
- 複雑な会話の履歴を持ったまま指示や修正を続けられる
- 分割して貼り付ける手間・途中で会話が切れるストレスが激減
長文からの情報抽出

長文資料から特定の記述を検索して抜粋させる作業に、ChatGPTを用いているという人も多くなっているはず。その精度も今回進化した。
Heliconeの検証では、100万トークンの長文から特定情報を正確に抜き出すテストでGPT-4.1はなんと100%成功。精度が大きく落ちていたGPT-4oでと比べて、大躍進を遂げた。
Finding Specific Information: When challenged to locate particular information in massive documents (the "needle-in-haystack" test), GPT-4.1 achieved 100% accuracy across all context lengths.
特定情報の検索: 膨大な文書から特定の情報を見つけ出す(「干し草の山から針」テスト)課題において、GPT-4.1はすべてのコンテキスト長で100%の精度を達成しました。
Helicone社「GPT-4.1 Full Developer Guide」
大量の資料を一気に読ませて、「ここだけ要約しろ」とやっても、きちっとやれる優秀なやつになった。
応答速度が40%UP!

AIが遅いとイライラする。世間は「賢さ」ばかり見るが、「速さ」も日常利用には不可欠。
WaltUR社の2025年5月15日公開記事「GPT-4.1 and the Frontier of AI: Capabilities, Improvements, and Comparison to Claude 3, Gemini, Mistral, and LLaMA」によると、GPT-4.1はGPT-4oより約40%高速になった。
Although GPT‑4.1 has more capabilities, it has been made more efficient. Compared to earlier models, it is quicker and more economical. According to OpenAI, GPT 4.1 responds roughly 40% faster than GPT 4 (also known as GPT 4o).
GPT-4.1はより多くの機能を備えていますが、より効率的に作られています。以前のモデルと比較して、より高速で経済的です。OpenAIによると、GPT-4.1はGPT-4(GPT-4oとも呼ばれる)よりも約40%高速に応答します。
WaltUR社「GPT‑4.1 and the Frontier of AI: Capabilities, Improvements, and Comparison to Claude 3, Gemini, Mistral, and LLaMA」
(性能に対して)コストが最大80%DOWN!

WaltURの調査では、GPT-4.1はGPT-4o比で最大80%のコスト削減を実現している(特にNano・Miniモデル)。
Just as important, the cost for processing input (prompt tokens) has dropped significantly – up to 80% lower cost per input token compared to prior versions.
同様に重要なのは、入力(プロンプトトークン)を処理するコストが大幅に下がり、以前のバージョンと比べて入力トークンあたり最大80%のコスト削減が実現されたことである。
WaltUR社「GPT‑4.1 and the Frontier of AI: Capabilities, Improvements, and Comparison to Claude 3, Gemini, Mistral, and LLaMA」
GPT-4.1では内部の効率化が進み、今までと同じかそれ以上に賢い回答を、ずっと少ない計算資源で出せるようになった。
さらに、「Mini」や「Nano」といった軽量版のモデルも同時にリリースされ、これが従来モデルより圧倒的に低コストで運用できる仕組みを作った。
つまり、ChatGPTの月額料金が安くなったという話ではないが、AIの頭の良さに対して、相対的にコストが安くなったという話。
まとめ
GPTの進化の具合は定量的に確実に読み取れる
生成AIは未だに「意味不明な推論」をしてくる場面もあるし、「はいはい、その返しはChatGPTらしいね」と鼻で笑うこともある。だが、以前と比べれば「使える道具」としての完成度が確実に一段上がったのは、数字でも体感でも間違いない。GPT-4.1の進化は確かだ。
- コーディングは2倍近くの成功率
- 長文処理は8倍以上のパワーアップ
- 複雑指示も大幅改善
- しかも40%速い & (相対的に)最大80%安い
生成AIには何かしら課金した方がいい

GPT4.1における、有料/無料による違いは次のとおり。無料ユーザーは現状、軽量版のminiしか使えない。
プラン種類 | 使えるモデル |
---|---|
無料プラン | GPT-4.1 mini(GPT-4oの回数制限後の代替として) |
有料プラン(Plus, Pro, Teamなど) | GPT-4.1(フル機能) GPT-4.1 mini ※いつでも切り替え可能 |
このとおり、当たり前だが、お金をかけられるかどうかで最新技術に触れられる機会、早さに確実に差が生まれてしまっている。
まだまだハルシネーションも起こすとはいえ、生成AIが仕事でも相方として活躍するようになって、もう随分と時間が経過した。この間、しっかり身銭を切って最新モデルに触れてきた人々と、出立ての頃のオモチャの域をでないチャットGPTしか使ったことなく、AIの進化を自分ごとと捉えきれていない人とでは、大きな差が出てしまっているといっても過言ではない。
chatGPTでなくても、Claudeでも何でもいいから、何かしらの生成AIの有料プランに身銭を投じて、技術の進歩を肌で感じて、自分の仕事ややりたいことを助けてくれるパートナーが育っている感触を味わおう。
そしてこのパートナーは、いずれあなたの仕事を奪うライバルとして立ちはだかるのだから、奪われる前に、使いこなせる人間になろう。
ChatGPTを賢く、冷静に使い倒せ。AIに頼りすぎず、使いこなせる人間が生き残る。