動機・当時の状況・結果
2024年の1月に基本情報技術者試験に合格したので、その体験記を書く。
IT未経験から合格した経験と、そこから得た学びについてまとめるので、参考にして欲しい。
勉強しようと思ったきっかけは、勤め先の人事課へのアピール。部署がたくさんあるそれなりの規模の組織なので配属希望はなかなか通らないのが常なのだが、文句を言う前に、目に見えてアピールできるものを身につけようと考えた。
また、仮に将来転職活動をするとすれば、IT業界がいいと当時から思っていたので、その上でも目に見える形で証が必要だと考えた。
俺のスペック

Ddです。
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参考までに、受験当時の俺のプロフィールを紹介。
- 学歴: 文系国立大学出身
- 社会人歴: 非IT業の社会人3年目
- プログラミング経験: ExcelVBAやPHPを少し触ったことある程度
- ITパスポート未取得
勉強時間と残業時間
2023年の9月半ばに勉強を開始して、11月に一度不合格となり、翌年2024年の1月にリベンジ合格を果たした。
俺の当時の残業時間はこんな感じ。
月(勉強開始〜合格まで) | 残業時間 | 備考 |
---|---|---|
9月 | 16時間45分 | 20日ごろから勉強開始 |
10月 | 24時間40分 | |
11月 | 38時間50分 | 26日に1回目受験(不合格) |
12月 | 12時間10分 | |
1月 | 53時間00分 | 7日に2回目受験(合格) |
サラリーマンとしては、特段多すぎることもなく、少なすぎることもない量ではないだろうか。
まあ、勉強を始めたてだった9月、10月が閑散期だったので、それに救われたところは大いにある。逆に、本試験を受験した時期が相対的には忙しかった。
大して体力も集中力もある方ではないので、平日2〜3時間、土日は3〜5時間ぐらいの勉強時間だった。ただし、勉強やってない日も普通にある。
試験概要(割愛)
試験概要については細かく説明すると長くなるので、この記事では割愛する。詳しくはIPAの公式サイトを参照してほしい。

合格までの軌跡
- 9月後半(学習初期)
- 試験概要の把握
- 科目Aのインプット
- 10月前半
- 科目Aのインプット継続
- 10月後半
- 科目A少しずつ成熟
- 科目Bの演習開始(試験の異色さに困惑)
- 11月
- 科目Aほぼ仕上がる
- 科目B相変わらず苦戦
- 11月26日 1度目の受験
- 不合格
- 12月
- 科目Bのリベンジに向けて頑張る
- 1月7日 2度目の受験
- 無事合格

9月後半(学習初期)
- 基礎理論は苦手なので後回し
- 行けそうな分野から手をつけていく
基礎理論は苦手なので後回し
勉強は科目Aから開始した。この頃の俺は、書籍で学習を進めようとしていた。
基本情報技術者の多くの書籍では、基数変換などを学ぶ基礎理論が序盤の章に掲載されている。
しかし、いきなり基礎理論でかなり面食らった。小数や分数なども含む値について、2進数、8進数、10進数、16進数などを互いに行き来しながら計算するのが基数変換の問題。
もちろん、「2進数は0と1のみで数を表すもので、オンとオフを表しているようなもの」だとか、「ストレージの容量が64GB、128 GB、256GBとかなのは、2のn乗の値だから」というようなことはさすがに文系の俺でも知っていた。
しかし、実際に解くという行為は、高2の時に少しだけ勉強しただけで、それ以来ほとんど縁がなかったもの。なかなか練習問題でも思うように解けず、基数変換が大の苦手となった。
いきなり大苦戦。残りの章もずっとこんな難しいことばっかりやっていくのかと思い、かなり気が滅入ったのを鮮明に覚えている。
行けそうな分野から手をつけていく
一旦参考書を読み進めてみると、残りの章は中学ぐらいまででやってきたレベルの計算問題や、暗記科目がほとんどであることに気づく。
SQLは少し触った経験があったので、データベースの分野を少し勉強してみて、過去問道場で10問ぐらい過去問を解いてみた。
すると、10問中5問ぐらいは解けた。
おお!これは、解けるぞ!と脳汁が出た。
データベースを含めたこれらの広い範囲の中から満遍なく出題されるのだから、仮に最後まで基礎理論をものにできなかったとしても十分合格のチャンスはあるではないか。いきなり暗雲が立ち込めていた中、再び光を見出した。
俺は、一旦基礎理論を脇に置いておいて、他の分野の学習を開始した。もちろん、基礎理論を完全にパスすることとしたわけではない。後回しにし、いずれ勉強するつもり。
この「問題の先送り」は、結果的にかなり功を奏した。苦手分野と戦うのは、他の分野を先に得点源にしてからしよう。
受験する試験の試験範囲の1%もまだ網羅できていない段階で戦うのと、残りの分野は一通り学習して、「後はコイツをやっつけるだけ」という状態で戦うのとでは、安心感が全く違う。
仮にその苦手分野をものにできなかったとしても、残りの9割については確実に実力がつきつつあるのだから。
基本情報技術者をこれから受験する人、とりわけ、俺のように文系出身の人については、肝に銘じてほしい。
基礎理論(苦手分野)と最初に戦おうとするな。
確かに「基礎理論」というだけあって、コンピュータの歴史を理解する上では大いに役に立つし、ITを生業とする上では、可能な限り早めに理解した方が良いのは事実だろう。
しかし、この基礎理論の理解が浅くとも、基本情報技術者試験の他の試験範囲の問題は十分解けるし、試験に合格することはできる。
10月前半 科目Aのインプット
- YouTube動画メインの学習に移行
- モチベアップの動画に救われる
YouTube動画メインの学習に移行
このころはひたすら科目Aの試験範囲を分野ごとにインプットしていく作業をこなしていた。
9月に勉強を始めた当初は、書籍でインプットをしようとしていたが、この頃にはYouTubeにすーさんという良質な動画教材を提供してくれている人がいると言うことを知ったので、YouTube中心の勉強に切り替わっていた。
最初にマネジメント系とストラテジ系からつぶし始めた。文系の自分にとっては、テクノロジー系の方が勉強負担が大きかったので、先に自分が得意そうな方から始めることにした。テクノロジー系の中でも特に基礎理論を後回しにしたのと、基本的に同じ理由である。
その章を一通り動画で、インプットを終えて、過去問道場を解いてみても、問題文中に、未知の用語が当たり前のように出てくるので、なかなか解けない。そこでまた、その新しい用語をネットでググって意味をノートにまとめた。
ただ、ひたすらその繰り返し。
モチベアップの動画に救われる
10月になっても未知の用語との遭遇は終わらないので、まだまだ苦しい。
なかなか過去問が解ける状態に辿り着かない苦しい状況で、勉強のモチベーションも下がってしまっていた、そんな中、教材としているすーさんのある動画に救われる。
動画によると、学習の習熟度というのは、勉強時間に比例して直線的に右肩上がりになるのではなく、階段状に上昇していくもの。特に最初のインプット段階では知識が増えているにも関わらず、それが得点に結びつかない、非常に虚しい時間が続くのが当たり前の時期なんだとか。
この動画の公開日は2023年10月23日。まさに当時の俺のために公開してくれた動画のようだった。
また、そもそもこうして社会人になってからもプライベートの時間に勉強をしている人は非常に少なく、この俺は「いい意味で外れ値」の存在だとも言ってくれた。
下を見てもダメとはよく言われるが、このとき、実際この励ましで俺のモチベは事実として向上し、後に合格を掴み取った。
下を見てモチベが上がるのなら、どんどん見ろ。そして自己肯定感をぶち上げろ。
10月後半
- 科目A少しずつ成熟
- 科目B演習開始
- トレースに不慣れで苦戦
そうしてモチベーションを何とか維持して勉強を継続しているうちに、徐々に解ける過去問の数が増えてきた。
過去問道場で7割を超えるようになっていた。
科目Aが暗記や四則演算で解けるようになるのに対し、科目Bは自分にとってかなり不慣れで厳しい試験だった。
科目Bのアルゴリズムとプログラミングの問題では、トレースという作業が必要になる。トレースとは、プログラムを実行したときに、どのように値が変化していくか、やイベントの因果関係を自分で追っていく作業のこと。
これが自分にとって人生で初めての作業で、かなり習得に苦労した。
「いやお前、Excel VBAとか触ったことあるのに、そういうことしたことなかったの?」と思われるかもしれない。そう、したことないのだ。
確かに、Excelマクロなどのプログラムを作成する時、このコードを実行したら、値がどのように出力されるか、といったことを逐一確認して作っている。
しかしそれは、テスト環境でデバッグをして行うのだ。あくまで演算をしているのはコンピュータのCPUであって俺ではない。
基本情報技術者試験の科目Bでは、この、コンピュータのCPUがやっている作業を自分の脳みそで行わないといけないのだ。
11月
- 上旬に仕事が突然繁忙
- トレースから逃げ、我流で科目Bの対策をする
上旬に仕事が突然繁忙
11月に入ると、科目Aでは過去問道場で8割を超えられるようになってきて、着実に実力がついてき始めた。
演習問題が解けるようになると、勉強が面白いと思えるようになるもの。勉強に対するストレスが下がり、勉強時間が増える好循環得た。
しかし一方で11月前半に、仕事が突然、インシデント対応によって繁忙期を迎えた。仕事柄、そういうときは当番性で職場に泊まって連日の対応となる。
これで一気に体力を持っていかれたので、家に帰って勉強どころではなくなった。
疲れが取れて、インシデント対応前ぐらいのペースでの勉強を本格的に再開できたのは、11月の中旬を過ぎてからだった。
トレースから逃げ、我流で科目Bの対策をする
この頃になっても、相変わらず科目Bはあまり成長している実感がなかった。この時点で、俺は科目Bのアルゴリズムとプログラミングの問題に、かなり我流の解法で挑もうとしていた。
簡潔にいうと、あまりトレースをせずに挑もうとしていた。
そんな方向性に俺が挑もうとしていたのには、一問に費やせる試験時間の短さにあった。
科目Bは100分の試験時間で20問の問題を解く。
公式例題集やパーフェクトラーニングで演習問題を解いてみて、10分や20分という時間がかかってしまっていた俺は、「いや、トレースを丁寧にやって合格するなんてどうやっても無理だろ」などと考えていた。
今思えば、ただトレース力が拙かっただけなのだが、当時は本気でそう考えていた。
11月26日 一度目の受験 不合格で落胆
こうして俺は、11月に一度目の受験を迎えた。CBT方式なので、自宅付近の受験センターに赴いて受験。
当日は、次のような流れで受験する。
- 受付・本人確認(身分証必要)
- 科目A受験
- 10分休憩
- 科目B受験
始まってしまえば、あっという間に時間が過ぎた。
基本情報技術者試験では、科目B受験直後にパソコン画面に得点が表示される。科目A・B両方で600点をこえていれば基本的に合格。
科目Bの試験時間が全て経過し、試験画面が強制的に終了画面に切り替わる。さあ、結果はどうだっただろうか。
結果、
科目A 750点、科目B 470点。
科目B惨敗により、不合格。
科目B受験中から、明らかに、解けているという実感はなかった。試験勉強で解いてきた公式例題集とパーフェクトラーニングの問題より、体感的にはワンランク難易度が高いように感じられた。
今日で終わらせるつもりだったのに。。まじで悔しい。
この夜は、この日俺が基本情報技術者試験を受験することを伝えていた友人が、励ましのために飲みに連れて行ってくれた。疲弊した頭に、ビールが沁みたのを覚えている。

12月 科目Bへのリベンジに向けて
あまりに悔しかったので、次の受験日をすぐに決めることとし、最も早く空きのあった2024年1月7日に予約した。しかし、勇んですぐに予約した一方で、ここから1ヶ月で科目Bに合格する力を付けられるのかという不安もよぎってきた。普通に自信を無くしてしまっていたわけだ。
とにかく、科目B惨敗の原因を分析することにした。いや、そこまで分析するほどのことではなかった。
トレース力の不足。
これが原因であることは分かりきっていた。
トレース力を身につけないといけない。しかし、これまで解いてきた「トレーニングブック」と公式例題に掲載されている問題は、もう解法をなんとなく覚えてしまっている。何より、本番の問題はこれらよりワンランク難しく感じた。
リベンジするには、これらより難易度の高い演習問題を解かないといけない。それも、これまでのような我流のトレースではなく、応用の効く、地に足のついたトレースによって回答を導ける必要がある。
そう考えて、新たな教材に手を出すことにした。ネットで調べた結果、次の2つの教材に行きついた。書籍「出るとこだけ!科目B」と、YouTubeのさいとうさんだ。
書籍:でるとこだけ!基本情報技術者科目B
YouTube:実践の鬼:IT学校さいとうさん
勉強方法
まず、書籍の「出るとこだけ!科目B」は、トレースのやり方、すなわち、試験本番中に渡されるA4用紙に具体的にどのように値の変化を記していくか、という説明を徹底的に具体的に書いてくれている。
これに倣い、効率的なトレースの書き方に関する作法を1から学び直した。
そして、YouTubeのさいとうさん。この人の動画の例題は本当に難しかった。繰り返しが長いし、再帰処理の階層も深い。11月までにやっていた我流のトレースでは、到底ごまかしの効かない難問(良問)ばかりだった。
このころの俺の勉強ノートがこんな感じ。何度も頭がぶっ壊れそうになりながら、必死で頑張った。

これに加えて、科目Aの知識も試験まで維持する必要があったため、頻度はあまり高くはないものの、模試形式で過去問道場もたまに解いていた。
疲れたら友達と温泉やサウナに行ってリフレッシュした。そんなこんなであっという間に年末を迎え、年が明けるとすぐに1月7日の再受験の日がやってきた。
1月7日 リベンジの日
迎えた2024年1月の再チャレンジ。本番では、科目Aは前回同様順調に進み、休憩後の科目Bの問題にも落ち着いて取り組むことができた。
前回苦戦したアルゴリズム問題も、「これはあのパターンかな?」と気付けたり、捨て問の見極めも冷静に行えたりと、明らかに手応えが違った。
試験終了時点では「これはイケたかも?」と内心ニヤリ。
結果、
科目A 680点、科目B 825点。
両科目とも、合格基準の600点を達成!🎉 画面に点数が表示された瞬間、豪快にガッツポーズした。💪

得られた教訓
目的を明確にすることが大事
- 目的が不明確だと勉強は続かない
- どこかに目的を明記しておこう
- 資格はあくまで「手段」
基本情報技術者試験という長期戦に挑む前に、「なぜこの資格が必要なのか」を具体的に整理したことが、挫折しそうなときの大きな支えになった。俺の場合は、現所属の人事課へのアピール材料にすることと、将来IT業界に転職する際に役立てることだった。
キャリアアップや社内評価の向上、将来の独立など、取得後に得られるメリットを紙に書き出し、壁に貼って随時確認すると、自分の努力が何のためかがぶれずにすむ。
また、資格はあくまで「手段」であり、本来の目的が何かを忘れないことが重要であると理解できた点も、大きな学び。

習慣化が命 どんな試験でもがむしゃらに勉強するしかない
- 習慣化が命
- 勉強はどうあがいてもストレス
- 科目Bの勉強に最初失敗したのは、ストレスから逃げようとしたから
まずは何よりもこれ。どんなにSNSやブログで合格ノウハウをかき集めても、結局は毎日時間を確保して勉強できるかどうか。
俺は今では、平日8〜10時間ぐらい働いたあとに、2〜3時間の勉強時間を確保することができるようになったが、もともとは本当にできなかった。辛くて仕方がなかった。
これにコツとかはなく、
脳をストレスに慣れさせてバグらせるしかない。
それが習慣化(ルーティン化)の正体。どう表現しようと、勉強する時間は人間にとってストレスでしかないのだから。そこから目を背けて楽な方法があるのではないかと、あれこれ余計なことを調べて迷走する時間は非常に無駄なのでもったいない。
俺が1度目の受験までの勉強で失敗したのは、科目Bに泥臭いトレースによって挑むストレスから逃げようとしたからだ。
体調を崩さない程度に無理をしろ
- 持続可能な形で勉強を続けることが大事
- 挫折リスクを軽減する
- 日中の仕事を犠牲にすべきではない
がむしゃらに勉強することは大事だが、連続した学習日数を追い求めるあまり、睡眠不足やバランスの偏った食事に走ると、かえって効率が低下し学習計画が破綻する。
俺は、インシデント対応で残業が急増した時は素直に勉強時間は削った。そうして持続可能な形で勉強を続けることが大事。特に社会人になってからの勉強では、これは非常に重要なポイント。
無理をしすぎて資格勉強を挫折するリスクを軽減できるだけでなく、体調を崩して本来の仕事のパフォーマンスが低下したり、休まざるを得なくなるのは、本末転倒である。社会人になった以上、プロとして働いているわけであり、日中(本業)の仕事を犠牲にしてまで時間外の勉強をするべきではない。
小さな成功体験を積み重ねろ
- タスクを細かく区切ること
- 苦手分野と戦うのは、それ以外の分野を得点源にしてからでいい
一度に大量の問題を解こうとせず、「今日はセキュリティ問題を5問」「用語を3つ暗記」など、小さく区切って日々達成感を味わうことで、自己効力感が徐々に高まっていった。
心理学の観点でも、小さな成功の積み重ねがドーパミン分泌を促し、やる気と記憶定着を助けることが知られている 。
実際、過去問道場の学習履歴に、正答できた記録が増えていくのを見るたびに達成感が得られ、その勢いで翌日の学習に向かう好循環を生めた 。
勉強する分野の順番を工夫したのも功を奏した。社会人の勉強では、学習の順番を自分で決めていい。
苦手分野と、受験する試験の試験範囲の1%もまだ網羅できていない段階で戦うのと、残りの分野は一通り学習して、「後はコイツをやっつけるだけ」という状態で戦うのとでは、安心感が全く違う。
苦手分野と戦うのは、それ以外の分野を得点源にしてからでいい。

次の目標
調子に乗って、次は応用情報技術者試験にもチャレンジしようかと画策中。基本情報技術者試験の上位互換にあたるので、共通する部分も多く、受験するなら、あまり間を開けずに受験するのがいいと聞く。
基本情報技術者試験の科目Bの擬似言語によるアルゴリズムとプログラミングにあたる試験がなく、記述式の試験に変わる。それにより文系にとっては、応用情報技術者試験の方が相性が良いと言うような話も聞くが、実際のところはどうかわからない。
ただ、基本情報技術者試験には一度不合格になった後に合格したからこそ、勉強すれば自分の実力は上がるということが証明されたため、なんとなくより上位の試験にも立ち向かえる自信を得ることができた。これが本当に大きなメリットだ。